揺れる年ごろ  『17歳』 [読書・映画感想]

4111_1391762657_l.jpg

皆さま、おはようございます。

今日は、趣向を変えておフランス映画を紹介したいなと思います。

タイトルはですね。『17歳』。
まぁ、多感な17歳の少女の『ヰタ・セクスアリス』的な話なのかな。
いかにも、フランスならではという、お国柄がしのばれるような映画ですね。

アメリカだったらこういうの『ジュノ』とか『青い珊瑚礁』みたいな話になるんだけど、
フランスはもうちょっと複雑かなぁ。

主人公のイザベルは17歳。結構裕福な家に育っている高校生です。そしてとてもきれい。
通っている高校が『アンリ四世』高校ってあるから、
すごく名門の進学校へ行っているんだと思うのね。
日本だったら、日比谷高校とか戸山高校とかそんな感じなのかな。

イザベルには一見なにも悩みがなさそうに見えるのですね。


イザベルは夏、一家で南のほうにヴァカンスへ行ったのだけど、
そのとき出会ったドイツ人の男の子といい仲になったんです。

イザベルはそのとき、ちょっとした失望を感じたのですね。
もうちょっと本に書いてあるような、スリリングでめくるめく快感があるかと思っていたのに。
相手の男の子は自分のことばかりに夢中で、ぜんぜん自分を女性として
大切に扱ってくれなかった…みたいな。
そこでイザベルはルックスがいい男の子への興味を失ってしまう。


イザベルの一家は弟と、義理の父親と母親といった構成です。
イザベルも美人ですが、母親もとてもきれいな人です。
母親も日本お母さんみたいに妙に厳格な教育ママではなく、かといって放置でもなく、
立派なお母さんだと思うんですね。
また、このお母さんは別に娘の若さや美貌や将来性に嫉妬しているわけでもないです。
だってこの人は、新しい伴侶に恵まれてるし、自分も仕事を持っているし、
未だに美しさを失っていないです。
家庭と仕事をきちんと両立していました。

「17歳だったら、当然そういう経験を積むべき」ぐらいに思っていて
別段、そのドイツ人の男の子とのことを禁止しているわけでもなかった。
「お母さんだって、若い頃はバカなことをいっぱいしてきたの」
って若い子の心理にも理解がある。

ですが、どういうわけか、別段お金にも困っているわけでもないのに、
イザベルは売春に走るようになったんですよね。
それも、おじさんばっかり。

結構、おじさんたちもお金払ったら、イザベルに「そこまでやらせるか?」みたいなことを
要求するんですよね。

だからといってイザベルは性の快感におぼれたとか、なにかコンプレックスがあって
おじさんが好きとか、そういうわけでもないのですね。
また、日本人で売春する子のよくある理由のひとつの
ブランドものがほしいからでもないらしい。


12359191425_25ca09a0ae.jpg

結構もう、おじいさんといってもいい男が常連さんになっていたのですが、
その人がいわゆる腹上死をしてしまうのです。

びっくりしてなんとか自分がもっている知識を総動員して蘇生を図ろうとするイザベルですが
そうは問屋が卸さないのですね。
びっくりして、額を角にぶつけてけがをして、急いでその場を離れるのです。

そういう一件があって、イザベルの所業は親の知るところとなりました。
お母さんは大ショックです。

性の経験を積んだらいいとは思ったけど、それはあくまでも恋愛の範囲だけのこと。
こんな売春なんて想像してませんでした。

「どうして、こういうことをするの!」
「これは、あたしの人生でしょ? あたしの勝手じゃない」
「なんですって、わたしはあなたの母親なのよ、平静でいられるわけないでしょ?」
と言って、母親はイザベルを何度もたたく。
「あんたはピュタン(売女)! ピュタンが私の娘だなんて!」
 
母親は泣く。

フランスは未成年が売春すると、それは基本的には未成年者が被害者となるので、
強制的にカウンセリングを受けさせられるのですね。

イザベルはどうして、こんなふうな行為に走ったか。

それは本当の父親がいなかったから、疑似的父親が欲しかったからじゃないのか。
母親の愛が足りなかったからじゃないのか。


12359191345_fca81463f9.jpg



などなど、カウセラーはあれこれと原因を探るのですが、本当のことはわからないんですね。
お母さんも「あたしがあの子に対して至らないところがあったのかしら」って結構悩むんですよね。
義理の父親が「まぁ、あの子はキレイだから…。いろいろと誘惑があるんだろうね」ともいい、
カウンセラーは「イザベルは限界を乗り越えようとしているチャレンジャーなんだ」
などと考えていたりするのですね。

映画は安易な結論を出さず、答えを見ている人にゆだねたまま、終わるのです。


人間の精神世界はもの善悪だけではとらえられない不可解もあるってことです。
監督はフランソワ・オゾンって人ですが、
「身体の衝動と心が結びついていない」少女と言ってました。
このまま、イザベルはちゃんとした女性になって幸せになる可能性もあるし、
また売春を重ねる可能性もある。

だけど、それは親の育て方が悪いとかそういうもんでもないんだね、ってそういうメッセージが含まれているのかも…。




nice!(2)  コメント(6) 

nice! 2

コメント 6

Yui

自分が17歳だった時は、そんなの平気だったような。
けど、この年になるともし自分に娘がいてその娘がそんな真似したらもうとんでもなく自分を責めると思います。
特に再婚して娘にとっての継父が自分の夫だったら。
by Yui (2018-10-14 19:52) 

sadafusa

映画のお母さん、可哀そうだったよ、
一生懸命育てた娘が売春したんんだから。

これが恋人が年よりのじーさんだったっていうのなら、
また話は変わると思うんだな。

お母さんはあんまりいい気持ちじゃないと思うけど、
「それも娘の人生」と思って受け入れるんだろうと思う。


by sadafusa (2018-10-14 21:10) 

Yui

女性の貞操は男性たちの幻想かなっとも思うのですが、母の立場になると辛いですね。息子が連れて来た女性がそういう職業の女性だったらと思うと本人たちが良くても複雑な思いに囚われてしまいそう。
by Yui (2018-10-14 22:25) 

sadafusa

どういうんでしょうねぇ。
男遍歴の猛者だったとして、それは恋愛が華やかな人として
認めると思うんでよね。
その、「生娘じゃなかった」とかそういうことでぎゃあぎゃあ騒ぎ立てたりはしないと思うんですよね。

ただ、性行為について金を受け取るということは、「性の奴隷」になりさがってしまったという、屈辱感がついてまわるんじゃないかと…。
上手く言えないんだけど、たとえば「おまえ、いつか俺に買われてた女だよな!」なんて言われたら、一族の恥になってしまうんだろうね。

まぁ、いつの時代でも堂々と夫の家族に「わたしは昔、売春していました」なんて言えるはずはないと思いますよ。
by sadafusa (2018-10-14 22:33) 

Yui

男遍歴が多いのは確かにそれほど気にならないな。
お金を受け取るというか、お金目当てに身体を差し出すとなるとかなり抵抗ある。
昔は自分からなんてことは言わずに幼い弟妹のために仕方なくとか、騙されてとか言っていたと思いますよ。あ、今でもそうかな。
悪女の深情けだっけ。そういうの。
by Yui (2018-10-15 08:46) 

sadafusa

まぁ、昔、結婚ぐらいしか女に生きていく選択が無かった時代は、高級売春婦であれ、ヨタカであれ、生活苦に苛まれてそうなった人が過半数かも。

でも、たしか鹿島茂センセイの著作の中で、「貧しさに心が疲弊していくだけの単調な毎日を送るよりは、自分がもし誇れる美貌があったなら、ココットとして打って出ようと思う女がいてもおかしくはなかった」みたいなこといってますね。


17歳で性的体験をする、っていうのは洋の東西を問わず、昔からよくあったことですよね。

わたしがちょっと映画を見て思ったのがですね、日ごろは人格者かなんかで通っている男が、金を出しても、自分を手に入れたいと思ったとき、一瞬だけでもイザベルの女の魅力に平伏しているんですよね。そのときの恍惚感というか自在感がたまんないのじゃないかって思ったりもするんだけどね。

わたしはここまでの美女になったことないから、よくわかんないけど、美しい自分の肢体がここまで価値があるとは思わなかったみたいな感じなんかなぁ…と。
by sadafusa (2018-10-15 11:59) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。