イイオトコの系譜③ [イイオトコの系譜]

さて、③ですね。

オル窓でイザーク出したんだったら、やっぱり他の人も出さねば。
イザークの次は…黒髪つながりで、この人にお出まし願おうかな…。

それは…レオニード・ユスーポフ侯爵ですね!!


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レオニードって名前がいいですよね、ロシアらしくて。
ピアニストのキーシンもレオニードだったかな。

レオニードって名前はロシア風ですが、西に行けば、レオニードもレオナルドになり、
イギリスに行けば、レナードになるのだと思う。

そう考えてみると結構普遍的な名前ですねぇ。

レオってライオンが入っているから、「獅子のナントカ」っていう意味なんだろうな、と思っていましたが、最近、ベルギーチョコで「レオニダス」という商標があるものをプレゼントされて、これをみて「ああ!『レオニード』ってギリシャ神話の中の『レオニダス王』から来ているんだね!」
と突然納得してしまいました。

ロシアの文化は西ヨーロッパと違い、ローマ帝国からビザンチン、そしてロシアと渡っていったので、結構、ギリシャ起源の名前が多いと聞きます。
余談ですが、オル窓の主人公のひとり、アレクセイの兄のドミートリィはギリシャ神話の豊穣の女神の『デメテル』を男性形に直したものだと聞きました。


さて、レオニードですね、レオニード。

この方はねぇ、私にとってはオル窓の中の男性の中で一位か二位を争う程好きな人物です。
っていうか、私の中の「物語の王子サマランキング(そんなものがあるのか? (笑))の中で、たぶんトップ10には入っていると思うな。それぐらい好き!

この方は帝国ロシアの軍人ですね!
しかも、陸軍の親衛隊の中でもたぶん、参謀だと思います。

『坂の上の雲』などを読むと、日本軍では秋山好古をはじめ、弟の秋山真之、児玉源太郎、明石元二郎、大山巌などなどなど、第二次世界大戦のあのアホみたいに硬直した日本軍とは違い、ものすごく優秀な人がいっぱいいます。
また、それとは反対に、ロシア軍もすごく強い将軍はいっぱいいて、とてもぞくぞくするほど楽しい。
クロパトキンとか、ロジェストヴェンスキーとか。

『オルフェウスの窓』って結構重層的な漫画で、西側から見るとマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の裏バージョンにも思えるし、東側から見ると、『坂の上の雲』のロシア版にも思えたりするんですのよ。
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あ、また脱線しちまった…。

レオニードに行かなきゃ。

主人公のユリウスは、いろいろと複雑な背景を一杯背負っている人なんですね。彼女の父親であるフォン・アーレンスマイヤは貴族で、現役時代にはバイエルン地方はレーゲンスブルグという街の顔役だったようですが、(彼女の母親はこの男の妾になっていたのですが、ユリウスを身ごもっちゃうと、捨てられちゃったのです。ですが、ユリウスが14歳ぐらいのときに後妻としてユリウス共々引き取られるんです。)それはいわば表の顔。実は裏ではロシア側の密偵をやっていたのです。いわば売国奴なんですね。

そして、なんとロシア帝室のスイス銀行に隠してある財産の『鍵』を持つ人物だったんですよ。
なにも知らず、愛するアレクセイを求めて、はるばるペテルブルグまで来たユリウスなのですが、ついたとたんに暴動が起き、そのときの流れ弾が当たって、看病してくれた家の当主がこのレオニード・ユスーポフ侯爵なのです。

レオニードは皇室の裏側を知る数少ない人間のひとりですが、「なんでまた、あのアーレンスマイヤの娘がロシアに…?」って感じでユリウスを危険人物だと知り、軟禁するんです。

そのとき、ユリウスは16か17歳。もう恋に盲目な少女でありまして、愛しいアレクセイのことしか眼中にないのですが、そういう一途さをみると、破綻した結婚生活を送っていたレオニードは苦々しい気持ちにならざるを得ない。はじめは結構いじめられちゃうんですよね。ユリウス。靴を履いたままの足で手を踏まれちゃったりさ。なんか酷いの。

ですが、ふたりの関係に突然変化が現れるのです。

それはユリウスは記憶喪失になってしまって、アレクセイのことも忘れちゃうんですね。もともと、ユリウスって母親に無理やり男のふりをさせられていて、自己の確立ができてない人だったので、なんだか記憶喪失になるとさらにさらに、情緒不安定になっていくんですよ。それで今まで散々ひどい目に会わされてきたレオニードにも捨てられた子犬みたいに、涙目でうるうるして慕っていくんですよ。

そうすると、『氷の刃』で孤高の存在にならざるを得なかったレオニードの心も、ユリウスによって潤っていくっていうか、温かい情愛ってものを知るようになるんですねぇ。

だからといって、すでに妻帯者で謹厳実直な軍人であるレオニードは、愛人を持つことを潔しとしなかったのか、ユリウスは愛されながらも立場はいつまでも「愛される妹」なのです。本当の妹であるヴェーラには結構残酷なことをしていたりするんですが…。

ま、こうやって生ぬるい関係を8年間ぐらい続けて、いよいよロシアも危なくなってきたとき、レオニードはユリウスを故国に返そうと決心するのです。


そのときの別れのシーンはめっちゃ切なくって~。今でも泣けますねぇ。

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しかし、運命というものは上手くいかないもので、ドイツに帰ろうとしたユリウスは、思いがけず、アレクセイに出会ってしまったのですね。

アレクセイは昔の恋人に突然出会って、我を忘れてユリウスを抱きしめるのですが、ユリウスは「ああ、昔、こういうふうに情熱的に抱きしめられたことがあった。その人は今私を抱きしめているこの人なんだ!」とは思い出したんですが、その先のことはやっぱり思い出せない。

結局、アレクセイも革命家なので、恋人だったといっても、今は記憶を喪失している彼女をここに留めるのはよくない、と思っていました。ですが理性ではそう思っていても、逆らえなかったんですね、情熱に。

レオニードはロシア帝国軍人、アレクセイは革命家。当然敵同士なのですが、ユリウスがドイツに帰らず、アレクセイと一緒になったと聞いても、レオニードってびっくりするのですが、それでも「仕合せになってほしい…」と思える人なんですよ。

要するに、武田信玄じゃないけど『敵に塩を送る』っていうか、敵対するようになっても、やはり昔愛した女性には優しいんですよね。

そういったわけで、ユリウスは何度も何度も窮地をそれとは知らずにレオニードに救ってもらっているんですね。

そして最後…ロシア帝国の崩壊とともに、レオニードは自裁するのです。

ロシア人にしては、妙にストイックな人なのですが、理代子先生はモデルを2・26事件の日本の将校に求められたそうです。それは…妙に納得です。


わたしねぇ~、今にして読み返してみると、アレクセイってユリウスのこと、「本当にこの人奥さんのこと、愛しているのかな」って思うくらい冷たいと思ったりする箇所あるんよ。それに反して、レオニードは男なのに実に細々と、影でユリウスの世話を焼いていたりするんです。
でね、ユリウスは私生児で父親の愛を知らないで育った人なので、レオニードに「父性的な愛」を感じていたんじゃないかなと思うのです。

そしてレオニードも、ユリウスはライバルのアレクセイの奥さんになったとしても、ずっと変わらぬ愛を持ち続けるんですよね。愛の質が違うって言ってしまえばそれまでなんだけど、レオニードの愛のほうがアレクセイの愛より深いような気がするの。

そして、影の存在で徹していた分、レオニードの愛のほうが崇高かもね。

話は変わりますが、本当かどうかは知りませんが、イタリアでは断然にアレクセイよりレオニードが好きだ!というファンの人が多いんだそうです

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追記

せっかくだから…

このレオニードですは劇中で、皇后のお気に入りの僧、ラスプーチン暗殺を企て実行していますが、これは本当です。

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ユスーポフ家というのは、ロシア屈指の名門中の名門で、ロマノフ王家より金持ちだったといわれています。今でもサンクトペテルブルクの街をグーグル・アースで検索してみると、「ユスーポフ公園』って出てきます。やっぱり大したものだったみたいですね。
ただ、レオニードの生涯は歴史のユスーポフ侯爵なのかっていうと、まったく違っておりまして、
フェリックス・ユスーポフって人なのですね。

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女装が趣味で~って、ご大家の御曹司にありがちのちょっとイってしまっている感が否めない人物のような気がします。

フェリックスのほうは、レオニードのように殉死などということはしないで、さっさと西側に亡命して、1967年まで(!)生きておられたそうですよ。

なお、女装が趣味でも、夫婦仲は実によくて、奥さんはず~っと仕合せだったそうです。(劇中では離婚してるケド)



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