『イノサン・ルージュ』9巻まで読みました。 [読書・映画感想]

皆さま、こんにちは。

先日の突然のあの、クソ長い文章は何だ?
と思っておられた方、それはこの記事を書くための前フリだったからなのですね。


さて、『イノサン・ルージュ』最新刊の9巻まで読了しました。

イノサンRougeルージュ 9 (ヤングジャンプコミックス)

イノサンRougeルージュ 9 (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者: 坂本 眞一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/11/19
  • メディア: コミック



これって、ヤングジャンプ連載なのか…。
一応少年誌ではなく、青年誌なわけですね。

この間の記事でフランスの死刑執行人、および、サンソン家の因縁みたいなものは
説明したと思います。

このサンソン家を思い出すとき必ずわたしが思い出す一家があるのですね。
それは「浅草弾座衛門」です。

弾座衛門は日本の穢多・非人の棟梁で、『弾座衛門』という名前自体襲名されるもので、
代々続いているのです。因みに「浅草」というのは苗字ではなく、弾座衛門が浅草に住んでいたからです。

日本も『死における不浄』っていう概念はそうとうなもので、
日本の賤民っていうのは、非人系と穢多系の二つに分かれるのですが、
穢多系っていうのは、動物の皮や肉などを扱う人々です。
武具などの鎧などは必ず動物の皮を使いますから、武士がいるところ、絶対に穢多系の集団は必要だったし、いなければいるところから呼び寄せるほど必要なくせに、さげすまれ方も半端なかったのです。

しかしながら、弾左衛門家の格式は相当に高く、身分は最低で旗本一万石の同等の扱いをうけ、しかも財力は五万石だったというのですから大したものです。ここら辺も高等法院の官吏として、相当な俸給をもらっていたサンソン家に通じるものがあります。

歴史にはこういった社会にはなくてはならない汚れ役の
サンソン家とか、弾座衛門という影のスターが存在します。


さて、漫画のほうに移りましょう。

坂本真一さんが描かれる、サンソン一族の物語ですが、
絵は非常に精密で美しいです。
アイパッドで絵をものすごく大きく拡大しますから、
ペンなどの手描きでは絶対になしえないような細かい細工が見事です。
特に目ですね。まつげの細かさとか本当に、ミニアチュールを見ているようで
神職人といえそうです。

それでずっと続けて読んでいるとわからないのですが、
意外と坂本先生は服装の移り変わりにも忠実で、
始めの方の「イノサン」の人々が着ているコスチュームと
革命近く、革命後のコスチュームには違いがあります。
初めはみな三角帽子をかぶっているのですが、
イノサン・ルージュの後半ぐらいから、ナポレオンのような二つ折りの
帽子に代わっているし、マリー・ジョゼフのいでたちもなんとなく
ナポレオンチックになっていくのが非常に興味深いです。


これって本当に申し訳ないとは思うんだけど、
安達正勝先生の本を換骨奪胎したような作品で

本来ならどんなに大サンソンと呼ばれる、シャルル・アンリが
死刑を嫌がって、死刑のない世の中を望んでいたかを描かれるべきだと思うけど、
なんか変な方向へいっていると思うんですよね。

まぁ、話が面白ければそれはそれでいいとは思うけど、なんかなぁ~って
感じがします。

それなら、いっそのこと「サンソン」という名前を使わなければいいのにとも
思ったりするんだよね。

本来のタイトルの「イノサン」というのは英語の「イノセント(無垢)」のことで
大サンソンが「これまで流された血に対して私ほど、無垢(イノサン)な者はいない」といった
ところにこのタイトルの意味があると思うのです。


まぁ、漫画でもシャルル・アンリは悩んでい這いますが…。
どうも書き込み方が甘いというか。
キリスト教社会をイマイチ理解していないというか。
いや、そういう面倒くさいことを描くと読者が離れてしまうから
敢えて描かないのかもしれないけど。


それでですね。イノサン・ルージュに行きますと、
主人公はもはやシャルル・アンリじゃなくて妹の『マリー・ジョゼフ』に移行するんですよね。

名前好きの私が見ると非常にこの名前は面白い。
マリー・ジョゼフとは「処女マリアとその夫のジョゼフ』のことであります。
聖家族、すなわち、サグラダファミリアって教会もありますね。
イエスのお父さんとお母さんのお名前なのですね。
フランス革命以後、フランスはライシテ(宗教の世俗化)が進み、
あんまり宗教色がなくなった国となりましたが、
今も連綿とカトリック信仰の篤い国であるスペインなんかは
生まれて来た赤ちゃんには、判で押したように最初に男も女もすべて「ホセ(ジョゼフ)・マリア(マリー)」とつけるのです。そこで初めて本来赤ちゃんにつけようと思った名前を付けるのです。
まぁ、日本でいえば戒名の『釈ナントカ』の釈とおんなじニュアンスでしょうか。


話はすぐに趣味のほうにそれて脱線しました。

で、このマリー・ジョゼフですが、なんていうのかなオスカルさまをグレさせたような
感じの美女なのです。
長身で金髪碧眼、男装そこまでは麗しのオスカルさまと一緒なのですが、
髪型がモヒカンなんですよねぇ。
でも髪が生えている部分は長くて多毛なので、帽子をかぶっていると
「おお!」って感じです。

だけど、この人は「死」とか「人殺し」ということに対して、
別段、恐怖も嫌悪感もわかない人なのです。

じゃあ、一種のサイコパスとか、善悪の彼岸を超えた人なのかと思って読んでいたりも
するんだけど、どうも猟奇的行動ばかり目立ってよくわからない。

8巻で自分の子供をはらんでひとりで妊娠・出産し、その子に
ドレスを着せてかわいいリボンで結んでやっているのだけど、
顔に大きな鉄仮面をかぶせているので、
この子の本当の性というのは不明ということに、現在の設定ではなっております。


とにかく、革命がフランスに起きたあと、
国王が処刑されたことで、一種のタガが外れた状態に国は陥るのです。

ロベスピエールは恐怖政治をした人で有名な人ですが、
はじめ彼は死刑制度というものに不満を持っていました。

ですが、民衆というものは抑えが効かなくなると
暴走し始めるもので、一種の集団心理とでもいうのでしょうか、
気に入らないことがあると、理屈ではなく、
暴動、殺人を犯して自分たちの都合のいいように事をもっていこうとするのです。

で、示しがつかなくなったので、仕方なく恐怖政治に移行するのですね。

ナポレオンは、ある意味、ロベスピエールなんかより容赦がなかったので、
こういう暴民に対して、遠慮なくブドウ弾(クラスター爆弾)を使って
殺していました。


なんか読んでいると、これをそのまま、信じている人がいそうで怖いです。



余談ですが
それに最近、noteを始めて思ったのですが、
一部の人でしょうが、自己顕示欲が増大して半端ない人が多いような気がするのです。
そんな自己肥大化した人は
自分がちょっとでも複雑な人間に見せたくて、「自分はゲイだ」とか
「自分はバイセクシャルだ」とかすぐに公表していますが、ちょっと待ってくださいっていいたい。

世の中には本当のゲイの人がいて、そういう人たちが苦労して今の社会を作ってこられたことに
若い世代は感謝すべきだとは思うのですが、
人間の中には「アニマ・アニムス」といって男でも女でも
それぞれに男の部分、女の部分というものは持ち合わせているものです。

ですから、このわたしでさえ、男っぽい部分もあります。
それをすぐに早飲み込みして「わたしはゲイです」「わたしはレズです」ってい
宣言するのはちょっと危険な兆候かなぁとも思うのですよね。

そうやって、本当の男女の恋愛から逃げる口実に使っているのでは?と勘繰りたくもなるのです。

皆さん、よいことも悪いことも、経験は大事です。
失敗を恐れずに前に進みましょう。




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コメント 4

Yui

いいなあ。イノサン ルージュ 時間ができたら読みたいです。
うちの息子は自分が「女の子だったらよかった」と言っています。4月から小4です。でも彼は好きになるのは女の子なので、性倒錯は全くなくて男の子でよかったと思います。赤やピンクの女の子スタイルが好きなのね。まあ、赤やピンクを男の子が着たって全然いいんだけどね。
by Yui (2019-02-07 20:55) 

sadafusa

イノサンはね、なんか気持ち悪いです。

今日、漫画を娘に見せたら「うわ~、この漫画怖い、夢に出てきそうだから見せないで~!!!」と拒否られました。

うちの息子は、服こそピンクは着なかったような気がするけど(チビなときから黒が好きなマセたガキンチョだった)、なんかピンクとか赤とか赤紫とかきれいな色が好きでした。

いいんじゃないの?
ブーシェも男だし、シャガールも男だ、モネも男なら、ル=シダネルも男だ、マチスも男。
色彩のキレいな絵を描く人に男女差はありませんって。
by sadafusa (2019-02-07 21:57) 

Yui

ええ、私の父もきれいな色、乙女チックなスタイルをした妻や娘が大好きでした。夫もです。(春までに痩せたらワンピースを買ってやると言ってます)
思うに男性のロマンチストの方が夢見がちと感じます。自分が着ない分だけよけいに乙女チックスタイルが好き。
by Yui (2019-02-08 14:34) 

sadafusa

うちの夫も乙女チックが大好きです。

乙女男子ですね(笑)
でも世の中、本格的に薔薇を育てているのは男子だと思うんですよ。
一月末ごろ、植え替えしたんですが、ひとつ根が張りまくって、鉢から取り出すのに、1時間以上かかったのもありました。そんときはもう、力仕事そのものでしたので、夫にまかせっきり。

夜会服ってきれいにドレープがよせてあったり、レースや花の刺繍、リボンでちりばめられているじゃないですか?あれって確かに女の人も気持ちが高揚するんだろうけど、男の人もそれ見て、絶対に「ああ、いいなぁ」って思ったんだと思うんですよね。逆に女の人は男の人がきりっと黒い燕尾服を着ていたりしたら凛々しくて心ときめいたんじゃないかな。

美しいものは、男も女もみんな好きですよね。
by sadafusa (2019-02-08 19:01) 

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