ベル・エポックのパリへようこそ! [読書・映画感想]

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みなさま、こんにちは。

さて、わたくし、先日、『響けユーフォニアム』ファンの聖地、出町は桝形商店街にある出町座へと行ってまいりました。

出町とは、京都は上京区の鴨川の端にある町のことです。

昔の京都の境界とはここまでで、鴨川を渡ると、もはやそこは京都ではなかったのです。ここはまぁ、鯖街道の拠点でもあり、まぁ、旅の出発点でもあったので、町を出る、つまり、出町となったのではないかと予想されます。

もとい、この出町座はですねぇ、ちょっと面白い映画館でして、京都にもアート系の映画館は二、三ありますが、出町座はそれの二番館みたいな役割をしています。京都の京都シネマで1週間しかやらなくて見そびれた映画などがこの出町座で上映されていたりします。

さて、わたくしがこれから紹介しようと思います、『ディリリとパリの時間旅行』っていうのもその類なのですね。

これは、実はフランスのアニメでして、最初から最後までフランスらしい美意識で打ち抜かれた作品なのです。

かてて加えて、ベル・エポック(美しい時代)と銘打たれたころのパリを舞台にして、すてきな冒険が繰り広げられます。

第一次世界大戦がはじまると、世の中、ものすごく様変わりしちゃうんですよ。それまで時間はゆったりと進んでいました。

それまでは貴婦人は長い髪の毛を結いあげ、ドレスを着つけるのに、二時間、三時間ほど時間をかけていたのです。

しかし、戦争になってマシンガンや戦車が出て来ますと、とてもじゃないけど、そんなことをしている時間の余裕がなくなり、長い髪の毛を切って断髪にし、さっさと機敏な行動をするために、コルセットなどという窮屈なものははずし、裳裾を引くようなドレスは丈を詰めて、ひざ下のスカートになるわけなのですね。


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 (原題は『パリのディリリ』というみたいですね)

ちょっとこのポスターをよく見ると、ん?と思われた方もいらっしゃいますでしょうか?



ここには、20世紀初頭にパリで活躍した有名人が載っていると思うのです。一番前の白い服をきた肌の浅黒い女のコが主人公のディリリ。そしてその隣の背の高い男のコがディリリのボーイフレンド、オレル。そして、もう反対側に立っている貴婦人が当時のパリで大変有名だった歌姫エマ・カルヴェです。

というようにですね、時系列にすれば10年や20年ほどのタイムラグがあって、本当はすれ違わなかったかもしれないけれど、当時パリで大変有名だった、あるいは現代において大変有名になった人々がぞろぞろと登場します。

ポスターを見て「おや?」と思う人がいますか?

わたくし、三分の一もわからなかったかもしれないですが、「ああ、この人ってもしかしたら、〇〇じゃないかなぁ」と思いながら見ているのは楽しいです。

(ちなみにボーイフレンドの横にいる、青いドレスをきた女性は、かの高名な物理学者、マリー・キュリー夫人です。学習漫画の偉人伝ではおなじみの人ですよね)



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1900年にパリは万国博覧会を開いたことはご存じでしょうか?

日本からは川上音二郎と妻の貞奴が招かれていたようです。

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当時のヨーロッパはジャポニズムって、日本風な芸術が流行っていたので、新劇の女優である貞奴さんはあちこちでモテモテだったみたいです。



さて、簡単なあらすじ。

1900年にパリで万国博覧会が行われたことは前述しました。

その中には、カヤック族のパビリオンも含まれていました。そこではカヤック族の模擬家族がカヤック族の一日を再現していました。そこへ木に登ってするするとカヤック族の女の子に近づいてきた少年がいました。名前をオレル。

「ねぇ、キミ。フランス語話せるかな?」

「ええ、カヤック語より得意なくらいよ」

 そうやって、約束の時間に現れた女の子はなんと、フランス風の真っ白なドレスを着て現れました。少年はびっくり。

ディリリはフランスにわたる前はニュー・カレドニアできちんとしたフランス風の教育を受けていたのですが、こっそり興味をひかれた忍び込んだ船が出航してしまい、そのままフランスに来てしまったとのこと。

でも、ディリリはフランスに憧れていたので、このことには満足していました。そして、ディリリは実はフランス人と現地人の混血児でした。

「いつも、窮屈な思いをしていたの。明るい肌をしているから、のけ者にされていた。だからフランスに来たら、すんなり受け入れてもらえるかなって思ったら、今度は『肌が黒い』といって差別される」

どうも、ディリリは万国博覧会が終わったら、ふるさとへ帰ろうと思っていたようです。でも、ずっと博覧会で働いていたので、パリをじっくり見物したことがないのが残念だとオレルに言いました。

「それなら、ボクに任せなよ。ボクはお届けもの屋をしているから、パリの隅から隅まで知っているよ」

というふうに、ディリリとオレルはパリのいろんなところを冒険します。

で、ですね、アニメの作りが非常に変わっていて、ところどころ、背景は写真なんですよ(加工はされていると思うけど)。それがなんだか非常に不思議な世界を構築しているんですよね。

オレルは華やかな表通りから、普段はまっとうな人なら物騒だからと近づかない裏通りまで、まさにパリの隅から隅まで、ディリリに案内してくれるのです。それが、見ている側にとって非常に面白い。

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ところが、パリには誘拐事件が立て続けに起こっていました。さらわれるのはだいたいみんなディリリのような年端も行かない少女ばかり。

しかし、これは近年女性の地位があがり、世の中に台頭してきたことをよく思わない「男性支配団」という秘密結社の秘密だということがわかったのです…。



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ここからしゃべってしまうと、面白くないので、ここまでにしておきますが、これって多少、フランスの歴史に関係あるのかなって思う所見を述べさせていただきます。

みなさん、ご存じのように、フランスは世界で初めて「人権宣言」をした国ですよね。

フランス革命は、人間の自由と平等、人民主権、言論の自由、三権分立、所有権の神聖などを唱えました。

ね、自由、平等、友愛、がフランス革命のスローガンでしたよね。すべての人が平等であるべきだ、っていうのは、当時差別があって当たり前という世の中にあっては天地がひっくりかえるほどの価値観の転換だったわけよ。

ですが、この平等というのは、女性とか、有色人種とか入っていなかったのです。

ディリリは女の子で、カヤック族とのハーフですから、そこらへんが思いっきり抵触しているわけよね。

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まぁ、いきなり女性もどんな人種も平等、というふうにはならなかったのです。

そしてこんな国でありながら、一皮めくるとフランスって国は、結構家父長制の強い国でありまして、フランス革命後、台頭してきたナポレオンなんてその権化であって、彼は女が出しゃばってるのが本当に許せなかったみたいですね。「女は家でつつましやかに、家事や裁縫でもしているのが望ましい」って思っていたみたいです。案外、こういう考え方って根強く一定のフランス人の中にあるみたいですね。

男性支配団というのは、そういった女が世の中に出しゃばっているのが、気に入らない男たちばっかで作られた秘密結社で、女の子をさらってきては、その子を男に従順な存在となるよう、家畜化というかペット化というか、奴隷化させようとしていたのよね。

まぁ、これは物語だからかなりわかりやすくカリカチュアライズされてあるけど、いまだにDV男が結構な数で存在しているフランスは、このことにもっと留意すべきなのかもしれないと思いました。もちろん、フランス以上に、男が幅を利かせている日本も同様です。

男も女あってこその男だし、また反対に女だって、男あっての女なんですよ。

女を否定することは、結局は男である自分をも否定することになる、とよくよく考えてみればわかることだと思います。





でも、お話はやはり最後はハッピーエンドになって、女の子たちは、ぶじ救出されるのだけど、その方法がまた、非常に美しい。

なんとレッド・ツェッペリン号が救出に来てくれるんですよ。

その部分が、なんていうのかなぁ、日本のアニメとも、アメリカのディズニーとも違うアプローチで、非常にフランス的演出なんですね。

行ってみれば、ローラン・プティ・バレエの美術を見ているようだった。非常に人工的でありながらも、繊細なんですよねぇ。

う~ん、さすが、フランス!

ビバ、フランス!

って感じで、フランスの底意地みたいなものを感じました。

最後のエンドロールで、ディリリと救出された女の子たちで踊るシーンが非常にかわいいので、載せておきますね。

https://www.youtube.com/watch?v=P56ALdTzmC4
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