薔薇の精 [雑文]

cinema_58_2.jpg





実はわたしは30年来のバレエファンです。




田舎から東京に出てすぐしたこと、それは、東京文化会館へ行って
イギリスロイヤル・バレエを見たことですね。


それまで田舎には、そういうビッグなバレエ団はこなかったからです。
でも、その当時、バレエといったら、いわゆる三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」がほとんどで、ちょっと毛色が変わったところで、せいぜいが「ジゼル」ぐらいでした。

10年ほど前に夫と大阪のフェスティバルホールで「ドン・キホーテ」の全幕ものをみたときは、「やっと日本もここまできたのだなぁ」と感無量でした。

それからは、「ロミオとジュリエット」「こうもり」「シンデレラ」と昔では考えられもしなかった演目がバンバン劇場にかかるようになって本当にうれしい限りです。


さて、今日は『薔薇の精』についてお話ししようかなと思います。

これはニジンスキーのために作られた演目なんですよ。

karsavina_nijinsky.jpg


これが当時の写真です。
抜群の跳躍力をもつと当時言われたニジンスキーが、最後に窓をめがけて飛ぶのですが、
そのまま飛んでいくように観客には思われたそうなんです。

当時の写真をみると、「うわ、これで本当にダンサーだったのか」とおもうほど、
手も足も短くてちんちくりんだと思うのですが、まぁ当時ってそんなもんなのでしょう。
これって、タイトルは『薔薇の精』なんですけど、曲はウェーバーの『舞踏への勧誘』なんです。
わたしはこと、バレエ音楽に関しては、チャイコフスキーの三大バレエを見過ぎたトラウマなのか、端正な旋律よりも、プロコフィエフの『シンデレラ』のような不協和音のある、ちょっと危うい雰囲気のものが好きになりました。


img_5.jpg


そういう意味ではこのウェーバーの『舞踏への勧誘』って端正でドイツっぽくって古臭くって、全くすきじゃないと思っていました。
それに、昔、熊川哲也が全盛期のとき、この『薔薇の精』を踊っているのを見たことがあったんですが、今考えてみると熊川哲也自身、この役はあんまり適役じゃなかったように思うのです。

薔薇の精ってね、男性のダンサーがピンク色のレオタードに全身その身を包んで踊るんです。
で、たいてい頭に薔薇の花をつけた水泳帽みたいなのを被っているんですよ。

ny1511a01-thumb-293x234-53685.jpg

だからね、結構恥ずかしい姿なんですよ。
でも、これって本当に胸が厚くて、手足のなが~~い人が踊ると、めっちゃかっこいい演目ではあるんです。ただ、「うわ~、すてきぃ」という域にまでに行きつかないことがほとんどなんですけどね。

案外、そしてこの演目はスタイルのよさももちろん求められるのですが、なんていうのかなぁ、
表現力っていうのも実はとても重要で、薔薇の精が、女の子を操るっていうのか、
夢を半ばみさせているような状態でとろ~んとしているところへそっときて、
ふたりで踊るっていう設定なんですよね。

う~ん、結構妖しい設定なんです。
でもね、踊る人が上手いと本当にすごい!!

実はニ三日前まで、『薔薇の精』なんてクソだ!と思って今までスキップしていたのですが、
わたしのバレエ王子である、ルジマトフさんのを怖いものみたさでみたんです。
やっぱり、バレエ王子、変態チックな『薔薇の精』も見事に、そしてセクシーに、優しく語り掛けるように踊っておられました、脱帽。

ParisOperaBalletRusses_Sub_BaraNoSeis.jpg

それを20回ぐらいみたあと、興味に駆られて、他のダンサーさんのをいろいろと見ていました。

意外とダメだったのが、バレエの帝王といわれた、ルドルフ・ヌレエフ。
金髪碧眼で完璧な王子さまなのに、実はゲイのウラジミール・マラーホフ。これもどういうわけかあかん。で、ヌレエフも、マラーホフもピンクのレオタード来てないのが潔くなくてまずあかん。

あと、バリシニコフ。バリシニコフはすごいダンサーで「ホワイト・ナイト」って映画でもすごくかっこよかったんだけど、どういうのかな、意外とプロポーションがそれほどよくないのだろうか?
あんまり色気を感じさせない演技でした。

意外とよかったのが、ルジマトフさまのライヴァルといわれたパトリック・デュポン。わたしはデュポンのどっちかというとかっちりしたプロポーションが好きじゃないのだけど、意外としっとりと踊っておられてよかったです。

cinema_58_2.jpg



最後にみなさまにもこの感動を供にしていただきたいので、youtubeのアドレスを貼っておきます。
アナニアシヴィリとルジマトフさまの奇跡の共演。ほとんど重力というものを感じさせない優雅な跳躍力。そして手の演技。最後の投げキスが悩殺ものですね(笑)

アナニアシヴィリはグルジア(現ジョージア)の人でルジマトフさまはウズベキスタンの人です。ここら辺の中央アジアの人は民族が交じり合っているせいか、あるいは騎馬民族の血のせいか、やたらと手足が長くて、足腰が強い人が多いのです。
アナニアシヴィリさんもボリショイの大輪の薔薇と謳われた人なんですよ。よく日本に来てました。

https://www.youtube.com/watch?v=_773LlvuYj0

あと、パリ・オペラ座のマニュエル・ルグリさんのも甲乙をつけがたい演技ですので、これもどうぞ。
ルジマトフさまのものが、ちょっと濃いなぁと思われる方はこっちのほうがよいかも。ものすごく上品な演技だと思います。
この演目は表現が難しいので、つい若いダンサーなんかはジャンプばっかり頑張る傾向にあると思うんだけど、そうするとこの作品って本当に退屈で「ひとりで勝手に踊っておれ!」みたいになってきて、見てる側は「早く終わらんか~」みたいになるんだけど、全くそういうこともなく、思わず引き込まれて見てしまう。

そこがただジャンプが上手いだけのダンサーとは違うってことですね。

https://www.youtube.com/watch?v=DBm8Kcr9FrQ


ふたりに共通しているのは、まず完璧なプロポーション。そしてたかい技術。まごうことない男性の演技です。ジャンプも高い。回転も速い。だけど、ふんわりと舞ってらっしゃる。ここがなんていうか、両性具有的なのかもなぁ。
マニュエル・ルグリってダンサーは昔からパリのエトワールで上手いことは解っていたけど、今回これを見て、この方の偉大さを改めて知ったように思います。

いずれの方も今は現役を退かれましたので、なんかちょっと寂しい。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最後に。

これ、先日咲いた、ステファニー・グッテンベルグです。
ドイツの薔薇で、これとボレロとどっちにしようか、だいぶ悩んだのですが、
あえてこれにしました。

大輪の薔薇で、とてもやさしい芳香がします。
この薔薇はその名前のとおり、イメージとしては女性らしい薔薇ですね。



IMG_1750.jpg

nice!(2)  コメント(12) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。