聖天さまの好物 清浄歓喜団 [インスピレーションのみなもと]

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皆さま、こんにちは。

そろそろさわやかな秋風が吹いてもいい頃なのですが、やたら降水量が多いような気がします。
関西だけなのかしら…?
関東はとても涼しいと聞きましたがどうでしょう?

さて、わたくしお彼岸の日に、非常にめずらかなお菓子を食しました。

それは「清浄歓喜団」というお菓子です。
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これは上からみたところ。



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これは横からみたところ。



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これが断面図です。


この清浄歓喜団というお菓子は非常に古い時代に大陸から伝わったお菓子なんです。
わたし、このお菓子は今から20年ほど前に『サライ』という雑誌で初めて知りまして、八坂神社の近くのお店でわざわざ買った思い出があります。

そのとき、食べた記憶は「なんか硬い!」というものです。記憶って20年も経つうちに変化するものらしくて、その硬い原因は中のアンが棗とか干し柿とかそういうドライフルーツが入っていたからだと思っていたのですが、そうではありませんでした。
ただ、渡来した当時はそういうものが詰まっていたのだけれど、江戸時代になると中があんこに変わったということが書かれていましたので、いつのまにか記憶もそのように書き換えられていたらしいです。

やはり記憶なんて自分のいいように書き換えられてしまうのですね。

ということで、予めそれほど、おいしいものではないということを知っておりましたので一個で十分。そして、以前は知る人ぞ知るといったお菓子も、今や伊勢丹で買えちゃったりするんですよね。
便利な世の中です。

ということで……、包装されていた透明の袋を開けますと、辺り一面に香ばしいゴマ油の香りがします。
撮影するため、素手でお菓子を触っていましたら、油でベタベタになりました。結構油っぽいです。

で、その甲殻のような外側を包丁でなんとか割るようにして斬りますと、まあ、見た目はふつうですね。

で、夫と一緒にティスティングです。

感想は非常に甘味の強いあんこで記憶にあるものより、ずっとおいしかったです。
食べた瞬間、肉桂の香りを強く感じました。「硬い」と感じていた外側の皮も、パリパリとしていてそれほど硬いとは思いませんでした。

ですが、後口にそのほかの、よくわからないけどお線香のような香りがずーっと口の中にとどまっています。どう表現すれば一番適切かよくわからないけど、なんていうか、口の中をお香で消毒というか清められた感じがします。

これまで、この清浄歓喜団、京都の方は略して「お団」と呼びますが、単に比叡山に昔から伝わる仏様のお供物としてのお菓子なんだという認識しかありませんでした。

ですが、わたくし、最近永久保貴一先生のお坊さんシリーズのマンガにはまっていて、その中にこんなシーンが書かれているんですよ。
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扉を閉ざしたままの厨子を拝むお坊さんの前に供えられたお菓子…。
これはどうみてもお団でしょう!

この閉ざされた厨子に入っている仏さまは「聖天」さんこと、歓喜天さまなんですよね。
歓喜天さまは非常に扱いの難しいといわれる仏さまなので、普通行をしているお坊さんしかその像を拝むことができません。ま、秘仏なんですね。

この方がお好きなお菓子なんだなぁとわかって、清浄歓喜団→歓喜天
ああ~!そうか、これは聖天さまにお供えするお菓子だったのか!
だからこういう不思議な名前だったのね!

そして、聖天さまの好きなものは大根と巾着と言われていますが、
どうして、このお団がこういう不思議な形をしているのか、一瞬で理解できました。
これは巾着をあらわしているのですね。


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ところで、聖天さまはインドではガネーシャと言われています。
密教はもともとバラモン教の神さまを天部の神として参入されています。

つまり、バラモン教の人にはちょっと失礼なんだけど、仏によってこれらの神を教化したってことになっているんです。

で、まぁこの聖天さまって男女の像人が抱き合っている(といっても向かい合っているという感じ。あっちのタントラ像のように激しい形ではありません)形をとっておられます。

なぜかというとこの世でやりたい放題をしているガネーシャをみて、聖十一面観音さまが自らメスのガネーシャに化け、このガネーシャの心を鎮めたからなのですね。
ですから、これは半分、ガネーシャで半分は観音さまなんですね。
そこがちょっと、本来のバラモンの神と仏教の天部の神との違うところなのかなぁと。


それでですね、また永久保先生のマンガに書いてあったのですが、ガネーシャはたくさんの手を持っていますが、その手のひとつはお菓子を持っているのですね。それが「モーダカ」といいまして、いわゆる「最中」の原型なのではってことです。

https://kimcafe.exblog.jp/26425790/
ここに詳しいモーダカの説明および、レシピが書いてあります。

非常に面白いのは、ガネーシャはお腹が弱いので、油を使ったお菓子を食べるとすぐにお腹を壊してしまうので、モーダカというのは、蒸し菓子であるということ。
日本に伝来するころには油で揚げてありますからねぇ。これじゃガネーシャはお腹が痛くなってしまいますが…(笑)


昔、自分が知りたい、手に入れたいという情報をゲットするには多大な労力と時間とお金を費やさなければなりませんでしたが、インターネットがあれば、「モーダカ レシピ」と検索するだけでこんなにすぐに情報が入手できる。すごいことです。

あっという間に、「清浄歓喜団」のルーツまでさかのぼれることが出来してしまうのです。
便利な世の中になったなぁとつくづく思います。

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