生と性  『御石神落とし』 [読書・映画感想]

みなさま、こんにちは。
前回永久保さんの新シリーズを丸善で購入したとき、このシリーズを発見しました。
永久保さん曰く「Hなのがキライじゃなかったら、是非読んでみてください」
ってことだったのですね。

え~、永久保さんって意外~。そういう方面の才能もあるのかぁと
興味に駆られて読んでみたのが
「御神石落とし」です。

なんでも絵コンテまでは永久保さんの手によるものなのらしいのですが、
やはり内容が内容だけに、永久保さんの絵柄だと読者もひくものがあると考えられたのか、
わりと今風のかわいい絵を描ける漫画家さんが描いておられました。





御石神落とし 1 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 1 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2004/09/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 2 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 2 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2005/06/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 3 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 3 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 4 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 4 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2006/03/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 5 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 5 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2006/09/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 6 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 6 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2007/01/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 7 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 7 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2007/05/29
  • メディア: Kindle版



御石神落とし 8 (ジェッツコミックス)

御石神落とし 8 (ジェッツコミックス)

  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2008/01/29
  • メディア: Kindle版




わたし、もともと民俗学ってすごく興味がある分野でして、
大学で農村の「若衆組」とか「娘組」の夜這いの風習とか
軽く学んだことがあるんですよ。

日本って昔から「貞節」ということをつい最近まで
非常にやかましく言っていた国だと思っていたんですよね。

ですが、それは江戸時代であれば、武士階級に限ったことであり、
明治に入ってから、日本全体にじわじわと蔓延した考え方なんで
もともと農耕民族である日本人は「性」に対しては驚くほどおおらかな考え方をしていた
というのがこの作品のもともとのコンセプトですね。
やはり田植えなどをするとき、神様に「豊穣」を祈願するわけですから
子供もたくさん授かることがよいことだったのですね。


現代に生きる草食系の大学生(男)が主人公なのですが、
あるとき、知らず知らずのうちにタイムスリップしていたみたいで、
昭和の初期の時代に来ていたんですね。

で、本人はそれに気が付かないですごい田舎でフィールドワークをしていたつもりで、
村祭りに参加するんですが、ふとしたことでその村の神社の神さまである「御石神さま」に
いたく気に入られてしまうんですよ。

で、この大学生はその神さまに授けられた力があって、
それはものすごいフェロモンを放って、どんな女でもメロメロにさせてしまうという
力なんですよ。

まぁ、他にもびっくり!みたいな力も授けられるんだけど、ここでは
ちょっと言いにくいので、興味がある人は読んでみて。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

主人公は現代はもちろんのこと、太古の昔から、自分の曽祖父が生きた農村の時代、はては吉原、そして平安時代とありとあらゆる世界に移行して、その時代の恋愛観を体験するわけなのですが、
わたしが一番興味を持って読んだのが、
主人公の曽祖父の明治の初期の時代の農村風景なのです。

結構、いろんな意味で「へぇ~」と思うことがいっぱいありました。
まずですね、男と女はある程度大きくなったら、
そうだなぁ、まぁ中学校へ入学するぐらいになるとそれぞれ
若衆組、娘組へ入るために
どうしても大人になるためには避けて通れない、通過儀礼みたいなものを体験するのですね。

まず、男の場合、
男は絶対に米俵を一俵担いで何メートルか歩かなきゃならないんです。
米俵はたしか70キロって書いてあったかなぁ、そういうのをひょいと担いで
歩かなきゃならないんですよ。

でも、それができないと村の力仕事なんか到底無理じゃないですか。

できることが最低条件。できなかったら、猿回しみたいな芸人に売られていくんですね。
厳しいです。

なんていうかな、これは「男として強い(つまり、力も強ければあっちのほうも強い)」という
証明なんですね。
そういう男じゃなきゃ、女に子供なんか産ませられないという、経験によって学んだ知恵みたいなものもあったようです。

女の子のほうは、こっちもなんかあからさまなんですけど、村の三十代ぐらいの、
誰もに尊敬されるような頭良い、性格もよい、容姿もよい、っていう若年寄みたいな人のところへ親に連れられていって、『初割れ』という初めての性体験をするわけなのです。(相手は、非常に人徳者ってところが大事だったわけですよ。この人はもちろん妻子持ち)
その男の人に初めて抱かれて、一人前の女、と村の人間から認められるのですね。


男の子たちは、神社のお堂に集められて、その道ではベテランの結婚して子供もいるような
お姉さまたちに、講習を受けるのです。


これもすごい!と思うんだけど、こういう若い男女の性のコントロールというのは
やはり若衆組、娘組のトップが管理していて、男女とも性の手練れになるまで、
いろんな人と組んで特訓していく…みたいな話になるんですよねぇ。
(村の掟はいろいろで、これはほんの一例)

なんか読んでて「えええ~」って思うんだけど、

反対に村のトップの命令って絶対なので、きちんと村の掟を守っている人に対しては
「あの人、不細工だから嫌」とか好き嫌いは言わせないんですよね。
だから、男女ともにあぶれることがないという…。

今日は自由恋愛が基本だから、どんどん男遍歴、女遍歴のつわものがいる一方で
まったく、男女のことに対しては奥手な人もいるので、
案外、こういう農村の若い男女のルールは合理的なものなのかと考えたりするわけですよ。
村の中にだって、やはり引っ込み思案のおとなしい人はいるはずなんで、若衆組、娘組のトップ同士が相談して「〇〇男と〇〇子なら、同じ年ごろだし、性格も似ているし案外うまくいくんでないか?」って、仲人さんみたいなこともしていたということです。


でもねぇ、だけど、読んでいてなんか、なんか腑に落ちないところもあるんですね。
わたしがもし、そのころの農村に生まれていて、こういう村のルールに喜んで従えることができるのかっていうと無理なような気がするんですよ。

好きでもない男とこういう本来なら秘密裡に行われるデリケートな作業ができるのか?
いやぁ~、嫌悪感が先立つわ~。村の祭りになると、乱交パーティみたいになるしねぇ。


うまく言えないけど、やはり女は産む性じゃないですか。
やはりものすごく永久保先生もデリケートな分野であるので、
そうとう気を付けて作っておられるとは思うのですが、
それでも、なんとなく男の手前勝手な、上から目線のような気がするんですよ。
(永久保先生、ごめんなさい! たぶん、女のわたしでもこのようなテーマに挑戦したとしたら、もっと悲惨な結果になっていると思います)


男は欲求が強くなると、「誰でもいい、女なら」みたいになるのかもしれないけど、
女は「誰でもいい、男なら」ってならないんじゃないですか?
いくら村の掟だからといって、好きでもない人とは肌を密着させたくないと思ってしまうのは、わたしが現代に生きる人間だからでしょうか?


だって、お産って命を懸けた一大仕事ですよ、
普通なら自分が好きだなと思う男の子を産みたいはずでしょ?
(それは無意識だろうけど、優秀な遺伝子を持つ子供を産みたいという願望だよね)
こんなことをしていたら、好きでもない男の子供をはらんでしまう可能性大じゃないですか?
よく考えられた合理的なルールであるとは思えるけど、うまく回っていたらそれでもいいのかもしれないけど、あまりに同調圧力が強すぎるとなぁ。

やはり小さい村の男女のこととはいえ、やはり年ごろの娘は好きな人と結ばれたいはずだし、そうじゃない人とはやりたくないものなのではないかなぁ~と。

まぁ、わたしはダメですね。こういうの。昔の農村に生まれなくてよかったと思う。


昔はそれでなくとも、男尊女卑が当たり前の風潮。
声を大にして「イヤ!」って言えなくて人知れず泣いた女の子は、結構多かったんじゃないかなぁ?




nice!(3)  コメント(2) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。