隠された暗黒史 『検証 四谷怪談』 [読書・映画感想]

皆さま、こんにちは。

最近、永久保貴一センセイ・ラブが止まりません。
先日、街へ行ったついでに本屋によって、このようなものを買いました。


検証 四谷怪談 (ほん怖コミックス)

検証 四谷怪談 (ほん怖コミックス)

  • 作者: 永久保貴一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/07/05
  • メディア: コミック




これは、ただのコケ脅かしのオカルト漫画ではなく、
タイトルに「検証」という言葉が付いている通り、
人口に膾炙された有名な怪談の実相はどうなのか?を考察した作品です。

いやぁ~、これを読んで心底永久保先生を尊敬します。
まるで漫画界の松本清張ですね。

本には三作品収録されておりまして、
本当に有名な「四谷怪談」「番町皿屋敷」そして「累が渕」ですね。

わたしは、この中の「番町皿屋敷」が抜群に面白かったので、
ここにはそれを取り上げたいと思いますね。

まぁ、「番町皿屋敷」って知らない人はいないと思うほど有名な怪談です。
東京の番町という、以前千姫が住んでいたいわくつきの場所に青山主膳という侍が住んでいて、
そこに女中のお菊というのがいたんですね。
そのお菊が家宝である1セットが10枚の皿の一枚割ってしまうのです。

そこから、悲劇が…。
可哀そうにお菊は縛り付けられ、井戸に投げられて死んでしまいます。

するとしばらくすると、夜中に「一枚、二枚、三枚…」と井戸のほうから、女の声がするのです。
そして「九枚」といってから「一枚足りぬ、かなしやのう…」とおんなの姿が…。

ざっとまぁ、こういう話ですが、
これは、お江戸の話でしょ?

わたし、姫路城へ行った時、「お菊井戸」をそこで発見しました。
「あれえ、お菊の話って播州の話だっけ?」みたいに思ったり、
「ああ、こういう話って全国各地に広まってるんだなぁ~」ぐらいにしか思ってなかったんですが、

永久保先生は、文献を古いほうへ、古いほうへと調べていくと、
今の群馬県の妙義山山麓の小幡氏には室町時代から、
この「お菊伝説」があるということがわかるのです。

だんだんとお菊と小幡氏はセットになっているんじゃないかって
わかってくるんですね。

そして…小幡一族が戦国時代を経て、日本の各地に散らばるにつれて、
この伝説も拡散されていくのです…。


さらに調べていくと、お菊伝説には必ず、その後ろに曹洞宗と白山信仰が垣間見えるのですね…。

そして、その白山信仰の神様は「ククリヒメ=菊理姫」なのです。
そしてこの伝説はいろんなヴァリエーションがありながら、
必ず「お菊が水に入って死ぬ」ことになっている。

水と蛇との関連も考えられるそうです。

で、そこで永久保先生が出した結論は…、うわ~恐ろしい!


菊理姫は処刑にかかわった人たちに祀られていた神だった


個人的に昔から「磔、獄門」っていう言葉にも、なにかマジカルなものがあるんじゃないかって
思っていたんですよね。
確かに罪人は処刑されなければならないのですが、それは果たして「みせしめ」だけのものだったのだろうかって。
そして「獄門」っていう文字もなんだか、わかったようなわからないような漢字がついているなぁって思っていたんですよ。これって絶対に中国から来た熟語だよねって。



すみません、脱線しました。

では、この神はどこからやってきたのかというと、
大陸からダイレクトに日本海側へ稲作が渡来したとき、一緒にやってきたというのです。
古代中国の長江上流域で行われていた「人頭祭」が日本に普及した記憶だろうと。
これって紀元前六世紀ぐらいに行われていた祭りらしいです。

つまり、農耕の神である蛇神さまへ、人間をいけにえに捧げていたのだろうとのこと。

この記憶は、日本神話にも残されておりまして、それはヤマタノオロチにいけにえとして捧げられようとして、スサノオノミコトに助けられた、クシナダヒメ=奇稲田姫だろうとのこと。

つまり、お菊とはククリヒメあるいはクシナダヒメの末裔なのだろうと。


で、ここでわたしは、生贄といいましたが、よく読むとそういうことではないらしいです。

昔、人を殺すというのは、もちろん神様に捧げる生贄の意味もありましたが、
殺して、神そのものにしてしまうという考えもあるのですね。

要するに、人を殺して祀って、たんぼの守り神にしてしまう…
つまり殺される人自身がダイレクトに蛇の神様になってしまうのですね。

でも…。それにしたって大陸から日本に伝わったきたのは弥生時代ぐらいだとして、
こういう伝説になったのは室町時代ですよ。
この1000年間のタイムラグは、どうするのか?
それは、たぶん中世の農村は相も変わらず、こういうことをこっそりやっていたのではないか…。
まぁ、ありそうなことです。
誰も口を拭っていいませんが。



というのがこの作品の推測であり、結論です。





ぱぱぱ~っとしか話しませんでした。
だって、すごっく難しいんだもん。
でも、興味湧いたでしょ?

面白いと思った方は、ぜひ漫画をじっくり読んでください。

やはり正史には決して語られることのない、負の記憶というものは
こんな思いもかけない形で残ることもあるってことですね。

本当に面白いです。
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