揺れる年ごろ  『17歳』 [読書・映画感想]

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皆さま、おはようございます。

今日は、趣向を変えておフランス映画を紹介したいなと思います。

タイトルはですね。『17歳』。
まぁ、多感な17歳の少女の『ヰタ・セクスアリス』的な話なのかな。
いかにも、フランスならではという、お国柄がしのばれるような映画ですね。

アメリカだったらこういうの『ジュノ』とか『青い珊瑚礁』みたいな話になるんだけど、
フランスはもうちょっと複雑かなぁ。

主人公のイザベルは17歳。結構裕福な家に育っている高校生です。そしてとてもきれい。
通っている高校が『アンリ四世』高校ってあるから、
すごく名門の進学校へ行っているんだと思うのね。
日本だったら、日比谷高校とか戸山高校とかそんな感じなのかな。

イザベルには一見なにも悩みがなさそうに見えるのですね。


イザベルは夏、一家で南のほうにヴァカンスへ行ったのだけど、
そのとき出会ったドイツ人の男の子といい仲になったんです。

イザベルはそのとき、ちょっとした失望を感じたのですね。
もうちょっと本に書いてあるような、スリリングでめくるめく快感があるかと思っていたのに。
相手の男の子は自分のことばかりに夢中で、ぜんぜん自分を女性として
大切に扱ってくれなかった…みたいな。
そこでイザベルはルックスがいい男の子への興味を失ってしまう。


イザベルの一家は弟と、義理の父親と母親といった構成です。
イザベルも美人ですが、母親もとてもきれいな人です。
母親も日本お母さんみたいに妙に厳格な教育ママではなく、かといって放置でもなく、
立派なお母さんだと思うんですね。
また、このお母さんは別に娘の若さや美貌や将来性に嫉妬しているわけでもないです。
だってこの人は、新しい伴侶に恵まれてるし、自分も仕事を持っているし、
未だに美しさを失っていないです。
家庭と仕事をきちんと両立していました。

「17歳だったら、当然そういう経験を積むべき」ぐらいに思っていて
別段、そのドイツ人の男の子とのことを禁止しているわけでもなかった。
「お母さんだって、若い頃はバカなことをいっぱいしてきたの」
って若い子の心理にも理解がある。

ですが、どういうわけか、別段お金にも困っているわけでもないのに、
イザベルは売春に走るようになったんですよね。
それも、おじさんばっかり。

結構、おじさんたちもお金払ったら、イザベルに「そこまでやらせるか?」みたいなことを
要求するんですよね。

だからといってイザベルは性の快感におぼれたとか、なにかコンプレックスがあって
おじさんが好きとか、そういうわけでもないのですね。
また、日本人で売春する子のよくある理由のひとつの
ブランドものがほしいからでもないらしい。


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結構もう、おじいさんといってもいい男が常連さんになっていたのですが、
その人がいわゆる腹上死をしてしまうのです。

びっくりしてなんとか自分がもっている知識を総動員して蘇生を図ろうとするイザベルですが
そうは問屋が卸さないのですね。
びっくりして、額を角にぶつけてけがをして、急いでその場を離れるのです。

そういう一件があって、イザベルの所業は親の知るところとなりました。
お母さんは大ショックです。

性の経験を積んだらいいとは思ったけど、それはあくまでも恋愛の範囲だけのこと。
こんな売春なんて想像してませんでした。

「どうして、こういうことをするの!」
「これは、あたしの人生でしょ? あたしの勝手じゃない」
「なんですって、わたしはあなたの母親なのよ、平静でいられるわけないでしょ?」
と言って、母親はイザベルを何度もたたく。
「あんたはピュタン(売女)! ピュタンが私の娘だなんて!」
 
母親は泣く。

フランスは未成年が売春すると、それは基本的には未成年者が被害者となるので、
強制的にカウンセリングを受けさせられるのですね。

イザベルはどうして、こんなふうな行為に走ったか。

それは本当の父親がいなかったから、疑似的父親が欲しかったからじゃないのか。
母親の愛が足りなかったからじゃないのか。


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などなど、カウセラーはあれこれと原因を探るのですが、本当のことはわからないんですね。
お母さんも「あたしがあの子に対して至らないところがあったのかしら」って結構悩むんですよね。
義理の父親が「まぁ、あの子はキレイだから…。いろいろと誘惑があるんだろうね」ともいい、
カウンセラーは「イザベルは限界を乗り越えようとしているチャレンジャーなんだ」
などと考えていたりするのですね。

映画は安易な結論を出さず、答えを見ている人にゆだねたまま、終わるのです。


人間の精神世界はもの善悪だけではとらえられない不可解もあるってことです。
監督はフランソワ・オゾンって人ですが、
「身体の衝動と心が結びついていない」少女と言ってました。
このまま、イザベルはちゃんとした女性になって幸せになる可能性もあるし、
また売春を重ねる可能性もある。

だけど、それは親の育て方が悪いとかそういうもんでもないんだね、ってそういうメッセージが含まれているのかも…。




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